臓器移植法改正案

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090618-00000127-jij-soci
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200906/2009061800447&rel=y&g=soc
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200906/2009061800450&rel=y&g=soc
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200906/2009061800752&rel=y&g=soc
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200906/2009061800786&rel=y&g=soc


A案が衆院可決されましたね。
ただ、参院で採決される前に解散したりすると、廃案になってしまうわけで、成立までまだ気が抜けなそうです。

ところで
古館氏が今日の報道ステーションで具体的な発言内容までは忘れましたが、ちょっと批判めいたこともいっていたのですがそれに対しては以下のような問題を抱える批判だと思います。
改正A案によると、脳死は一律に人の死となりますが、家族の同意なくば臓器移植はできませんので、家族の意向を無視して脳死患者を部品のように扱われてしまう、という弊害は基本的には起こりえないことになるわけです。
なのに、この点を考慮せずして移植を望まない家族の心境を傷付ける、といった批判をする人が見受けられます。


これは、法案の具体的中身を一切検討しない極論を述べている批判なので、議論の的をはずしているのではないでしょうか。



>>「脳死を一律に人の死としないで」
とか、
>>「わたしは死体と寄り添っていたの?」
といったような批判もあるようです。


確かに、脳死は一律に人の死なのですが、実際に法的に死となるには、臓器提供を見こした法的な脳死判定が必要で、ただ医者が事実上脳死ですと宣告するだけでは臓器移植法改正A案における「脳死」にはあたらないことになるそうです。


とすると、家族が臓器移植を拒否することにより法的脳死判定が行われなければ*1臓器移植法改正A案における「脳死」かどうかはわからないことになりますから、この場合は原則に立ち戻って、三兆候によって死亡が判断されることになるそうです。
よって、脳死を一律に人の死と取り扱うにようになったとしても、家族の意向を無視してまで脳死と判断され死亡扱いされることにはならず、まだあったかいのに死亡扱いされることによる家族の悲しみ、ということについても手当がなされているわけです。


また、脳死状態でも長期間身体は生命活動を続ける場合があるのに、という批判があります。
そのような脳死患者を死亡扱いしてもいいのか、という倫理的問題は確かにあります。
ただ、植物状態と異なり脳死状態は現状では不可逆な状態で、もはや脳死になった以上は、回復の可能性はありません。


呼吸活動も停止するため、身体の生命活動を継続させるためには人工呼吸器が必須で、しかも脳が崩壊し始めるため、人工呼吸器等の補助があってもなお通常長くは生きられません。呼吸器のほか、遠からず心停止にいたるからです。
まれに、特に子供には1年強身体が生命活動を続けるケースもありますが、それでも不可逆状態であることはかわりありません。


とすると、不可回復状態でかつ自然状態では生命活動ができない状態なわけですから、これを人の死とすることは医学的に見地からも不当ではないのではないでしょうか。
医学の進歩により身体の生命活動の延長はある程度可能になりましたが、それでも不可回復状態の解消にはいたらないからです。


望まない家族についての手当が上述の通りなされていることを考えれば、臓器移植を望む患者や海外で移植をする問題を考えれば、A案は結局妥当なのではないか、と思う次第です。


問題として残るのは、法的脳死判定がなされずとも、脳死と事実上判断されることによって、医師としてはもう死亡したとの心証が形成され、後の延命医療がおざなりになるのではないか、という点だと思います。
ただ、医者は延命を望む家族がいるならば、真摯に延命行為をすると信じたいところです。後は、報酬と臓器移植成功による名誉が絡んでくると思うのですが・・・・
難しい問題ですね。



審議が拙速すぎるという批判もありますが、社会情勢が煮詰まるのを待っていては救えない命も多いわけで。
脳死を人の死とすることにも十分な理論的な妥当性があり、家族については一定の配慮がされている以上、もう立法してもいいのではないか、と個人的には思う次第です。
治療の手抜きについては、立法外の対処が可能であるとも思いますし。

*1:治療方針決定のための事実上の脳死判定の場合、法的脳死判定の6要件のうち、無呼吸テストをしない脳死判定をすることが多いそうです。もちろん、6要件を満たしていると判断されない以上、法的脳死判定ではありません。