続々続々・モルト

蒸留所とボトラー


モルトウィスキーは生産地域による特性もあるにはあります。
しかし、蒸留所ごとに見事なまでに個性あるものを生産している、といえるでしょう。
まず、蒸留所ごとの違い、個性を味わうところからはじめましょう。

次に同じ蒸留所のオフィシャルボトル*1でも熟成年数の違い、使用する樽の違い、度数の違いなどによりまた味わいが異なります。
例えば、グレンモーレンジは年数の違いで12年物、18年物を、樽の違いでポート・ウッド・フィニッシュ*2シェリー・ウッド・フィニッシュ*3、マディラ・ウッド・フィニッシュ*4を、度数の違いでカスク・ストレングス*5などを出していて、同じ蒸留所のボトルとはいえ、どれも味わいは異なってきます。
ちなみにポートワイン、シェリー酒、マディラ酒はすべて酒精強化ワイン(フォーティファイド・ワイン)*6です。


さらに、モルトウィスキーの世界には独立瓶詰業者(ボトラー)*7というものが存在します。
ボトラーは蒸留所から樽でモルトウィスキーを仕入れ、瓶詰して販売することを商いとしていますが、多くのボトラーは自社で熟成を施し、蒸留所が出すオフィシャルボトルとは異なる年数、異なる度数で販売している物が多いです。
ボトラーまで範囲を広げるとモルトウィスキーのボトルはたいへんな種類となり、実に幅の広い世界となるわけです。
ゴードン&マクファイル、ケイデンヘッド、キングスバリー、シグナトリーなどがよく知られています。


モルトウィスキーの蒸留所としては現在飲めるもので100ちょっとしかなくてですね、全ての蒸留所のどれかのボトルを飲むことはやってやれないことはないこと*8であるといえます。
全ての蒸留所の全てのボトルをボトラー物まで含めて飲むことは、まあ不可能ですね。
こうした個性にあふれ、奥の深い世界がモルトウィスキーの魅力のひとつとなっていると言えたり言えなかったり。

第五夜を終了とさせていただきます

*1:後述のボトラーによる瓶詰めに対して、蒸留所が直接つめているもの。一切オフィシャルボトルを瓶詰めしない蒸留所もあります

*2:その名の通りポートワインを寝かせた後の空樽を使って熟成させたボトル。ただし、全てその樽で行うわけではなくて、バーボン樽で熟成させた後、仕上げとしてポートワインの空樽で熟成させた物。

*3:バーボン樽で寝かせた後、シェリーの空樽を使って仕上げる。

*4:マディラワインの空樽を使って最終熟成させたモルトウィスキーがこのマディラウッド・フィニッシュ。マディラの空樽はモルトウィスキーの熟成で使われることはめったにないそうです。

*5:モルト・ウィスキーは通常水を加えて度数40度もしくは43度にして瓶詰されます。カスク・ストレングスは加水をせずにそのまま瓶詰したもののこと。度数は50〜60度くらい。日本語に訳しての「樽出し」と同じです。

*6:蛇足ですが、ベースのスティルワイン(普通のワインのことです)を造る途中、あるいは造った後ブランデーなどを添加してアルコール度を高めて酵母菌を殺し、発酵を止めたり、味にコクを持たせるとともに、日持ちするように作り上げたものの事。

*7:ワインでいうところのネゴシアンですね

*8:ワインならば10万〜20万種あるとのことです