出題趣旨公開

今年の論文の出題趣旨が公開されましたね。


http://www.moj.go.jp/SHIKEN/SHINSHIHOU/h21kekka01-9.pdf


まだ全部は見ていないのですが、明らかに手ごたえがないから気になっていた憲法がやはりかけていないこと
月曜日感想を述べねばならないので優先的に参照した会社法はほぼもれなく出題趣旨を論じられていること
まったくわからなかった経済法第1問で自分の答案が、出題趣旨にまったくといっていいほど触れていないこと*1
などがわかりました。


しかし、個人的にはやはり刑訴法が来ましたね。
設問1
僕は試験後、とりあえず撮影を強制処分として、差押え対象物に該当するかを検討して本来適法に令状差押えができるものかから検討していくべきだ、といったのですが、任意だとか必要な処分だから、とかあまり賛成が得られなくてちょっと自信をなくしていたわけですが*2

具体的事例の写真1から4のいずれについても,写真撮影の対象が本件捜索差押許可状の差押対象物,すなわち令状の本来的効力の対象である「本件に関連する保険証書,借用証書,預金通帳,金銭出納帳,手帳,メモ,ノート」に該当するか否かをまず検討し,その上で,当該写真撮影が証拠物の証拠価値を保存するためなどに必要であるか否かを検討してその適法性を論ずることになろう

ばっちしじゃないですか。


それから写真1については誰からも賛同を得られなかったけど

例えば,写真1については,白壁に書かれた記載の意味について甲の供述調書の記載から,本件との関連性を認定し,差押対象物である「本件に関連するメモ」として,白壁の一部を破壊し取り外して差し押さえるよりも写真撮影にとどめる方が処分を受ける者にとって不利益がより小さいため適法であるなどとの分析が可能である

って、まさに俺の答案そのものじゃないですか。警察比例の原則ですよ。


そして設問2
周りがみんな実況見分調書の判例に飛びついて、あれは自白だから322条1項で署名押印が・・・・とかいっている中
僕はただ一人、いや、あれは321条3項でいけるかが問題で
検討すべきは、検察官の立証趣旨を要証事実とした場合の関連性があるかどうかを厚く論じるべきだ
それで、判例と違って今回はこれを肯定できるから立証趣旨どおりの要証事実の設定が可能で
321条3項の要件だけで証拠能力が認められると書いたわけですよ。


やっぱり賛成は誰からも得られなかったので凹んでいたわけですけど

本件実況見分調書の証拠調べ請求に対し,不同意の意見を述べている。犯行再現行為が問題となった判例によれば,弁護人が考えるように犯罪事実の存在が要証事実になると見るべき場合には,刑事訴訟法第321条第3項所定の要件を満たす必要があるだけではなく,再現者が被告人である場合には同法第322条第1項所定の要件をも満たす必要があるとされていることから,果たして本件における要証事実をどのようにとらえるべきか,事例中に現れた具体的事実関係を前提にして,的確な分析が求められる。
判例の見解が前提としていた事案とは異なり,検察官が設定した立証趣旨をそのまま前提にするとおよそ証拠としては無意味になるような例外的な場合などではなく,甲が供述しているような犯行態様が現場の客観的な環境との関係で物理的に可能であるか否かが正に問題になる事案であるとの理解が可能である。


やはり、僕があっていたわけです!
まあ、賛同者いないといってもそんな10人以上に聞いたわけではないんですけどね。


やっぱり判例そのものじゃなくてその前提の部分が問題になっている引っ掛け問題だと考えてよかったわけだよな、と思ってうれしかったですね。
周りと一緒だから安心すればいいや、というものではないことがわかりました。
現場思考型の問題では判例に飛びついてはいけない、という教訓になる問題ですね。昨夜お会いした川上拓一先生がおっしゃっていましたが。


その場合問題になるのは、今回たまたま僕は刑事訴訟法ヒットしましたが、周りはこう考えるだろうけど、誰も気がつかない真の論点を俺は見つけた!
とか思っていると往々にしてそれは単なる妄想・錯覚で空振りしてひどいことになる、ということなわけですが・・・・
そういう経験いっぱいありますからね。
辰巳の模試とかでも。
戦略・戦術的に難しいところです。あえて自分を信じてその論点にかけるか、他人と同じ事を書いていれば一緒に原点されるから空振りしてもダメージは少なかろうと割り切るか。


ちなみに僕がこの設問2の関連性の観点に気がつけたのは川上先生、平尾先生、栗原先生の刑事実務家3名のご教授の賜物です。
判例(最判平成17年9月27日)は検察官の立証趣旨とは異なる要証事実を前提に判示していることが大事だからそれに注意しろ(栗原先生)。
なぜ判例が検察官の立証趣旨を要証事実として認めなかったのか。それは要証事実を立証趣旨どおりとしてしまうと伝聞法則の潜脱になるから(川上先生)。
潜脱になるかどうかは、立証趣旨を立証する場合の証拠の関連性で判断する。判例の事案で立証趣旨どおりの事実を立証しても心象的に何も意味がないから、そのような要証事実を前提にするとその証拠にはなんら関連性がないことになる(平尾先生)。


実務家教員ってすばらしい・・・・・。いやマジで。

*1:いやよく50点いきましたね、これ。第2問はまあ書けていたのでなんとか、という感じでしょうか。

*2:賛同者もいました