遺言の方式
TMHRが弁護士を通していないので、法的には遺言状じゃなくて遺書か、見たいなことを書いていたので軽く解説。
民法960条によれば、遺言は要式行為で、法律上定められた形式を満たしていないと法的な遺言となりません。
そういう意味では、形式を満たさない遺言は、単なる遺書というのは正解。
では、弁護士を通さないと遺言にならないのか。
民法967条本文において、自筆証書、公正証書又は秘密証書の三つの方式があることが定められています*1
三つの形式については、以下の民法の条文参照
(自筆証書遺言)第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
というわけで、弁護士を通さなくても民法968条の様式を満たしていれば、自筆証書遺言として効力を持つわけです。
ポイントは、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならないの部分です。
全文書くこと。
年月日は日付までキチンと記載すること。たとえば、三月吉日とかしてしまうと、それだけでアウト!
そんなガチガチな、と思いになるかもしれませんが、遺言が複数あり、その内容が抵触する場合は、抵触する箇所については一番新しいものが効力をもつので*2、日付が重要なのです!
(公正証書遺言)第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
1.証人2人以上の立会いがあること。
2.遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
3.公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
4.遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を附記して、署名に代えることができる。
5.公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を附記して、これに署名し、印をおすこと。
公証人を入れると高くつきますが、自筆証書遺言と違って、様式を満たしているかどうか公証人がチェックしてくれるので安全です。
公正証書として保管されるので、遺言紛失の危険がないという利点もあります。
ただし、手数料を結構取られるので何度も書き直すのには向きませんね。
(秘密証書遺言)第970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
1.遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
2.遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
3.遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
4.公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第968条第2項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
公正証書遺言は遺言内容が知られてしまうので、秘密にしたい場合はこれ。
あまり使われていないそうですが、遺言内容をタイプ打ちできるという利点があります。
というわけで、別に法律上は弁護士いらないのです。
弁護士を通すのは、相続関係が複雑な場合とか、自分だけでは十分な遺言が書けない場合に代わりに作成してもらうのです。*3
それを自分で清書すれば自筆証書遺言になりますし、他の二つでもアドバイスをもらったり証人になってもらったりということができます。
後は遺言の執行者になってもらうということもできますし、結構多いようです。
なお、遺言は法律行為なので法的効果を発生させる内容でないといかに様式を満たしていても法的意味がありません。
たとえば、遺言の内容で自分の人生について語ってもらっても法的には意味がほとんどないわけですね。
だから、一般に遺言の内容として法的に意味があるのは・・・・
- 財産の処分
- 推定相続人の廃除とその取消
- 認知
- 後見人、後見監督人の指定
- 相続分の指定または指定の委託
- 遺産分割方法の指定または指定の委託
- 遺産分割の禁止
- 相続人相互の担保責任の指定
- 遺言執行者の指定または指定の委託
- 遺贈減殺方法の指定
こんなところでしょうかね。