続・モルト
んで今日はなかでも、スコッチウィスキーについて語りたいと思います。
昨日も書いたとおり、スコッチ・ウィスキーは性質の違いから３つのタイプに分けられるわけです。モルト・ウィスキー、グレーン・ウィスキー、ブレンデッド・ウィスキーですね。
スコットランドには四つの大きなウィスキーの蒸留所群があります。
- スペイサイド（Speyside）
ハイランド北東部のスペイ川流域の蒸留所群。その数は全蒸留所の半数近くに昇り、文字通りモルト・ウィスキーの中心地となっています。
- ハイランド（Highland）
スコットランド北部全域に点在する蒸留所群。およそ４０の蒸留所がある。西のグリーノック（greenock）と東のダンディー（dundee）を結ぶ線より北を通常”ハイランド”と呼んでいるので、地理的にはスペイサイドもハイランドですが、区別されます。スペイサイド以外のハイランド地方に点在する蒸留所ってことですね。
- ローランド（Lowland）
スコットランド南部に存在する蒸留所群。かつては多くの蒸留所が存在しましたが、現在稼働中の蒸留所はわずかに３つのみ。かろうじて飲める銘柄はわずかに１１種。貴重です。
スコットランド南西に位置するアイラ島に存在する蒸留所群。８つの蒸留所があります。*1
んでどうなっているかというとですね。
グレーン・ウィスキーは主にとうもろこし、大麦麦芽を連続式蒸留機で蒸留後、樽熟成したウィスキーなわけです。
高いアルコール濃度で蒸留する結果、味わいはソフトでマイルドになるのです。その性質からサイレント・スピリッツとも呼ばれるそうです。
もともとウィスキーは大麦麦芽のモルトウィスキーだったわけです。
そんな中、グレーン・ウィスキーが発展したきっかけは１７２５年に導入された麦芽税。
この麦芽税に対し事業家はローランドに大規模な蒸留所を建て、麦芽の使用量を大幅に減らしたウィスキーを作りはじめたんです。
さらに１７８０年からは釜容量税が導入され、税金はぐんぐん上昇。
これに対しローランドの蒸留所は蒸留釜の深さを浅くし、蒸留回数を増やすことで採算を取ろうとしました。ここから連続式蒸留機が発展。
こうしてグレーン・ウィスキーは確立され、今も昔も大産地はローランドにあるわけです。
一方、小規模にウィスキーを作っていた人々は釜容量税導入前から小さい蒸留釜が認められなくなり、密造に走らざるを得なくなってしまいました。
彼らは収税吏の目が届かないハイランドの山里に逃げ、ハイランドには無数の密造者（スマグラーという）が乱立していたのです。
今日でもハイランド、ことにスペイサイドには多くの蒸留所がありますが、そうした場所はたいてい密造酒のメッカだったところなわけです。
また、彼らは大麦麦芽を乾燥させる燃料として野山に無尽蔵にあったピート*2を利用したんですね。
これが幸いしてモルト・ウィスキーのさわやかな香味の元になり、モルト・ウィスキーも確立されていったんです。
１８２４年、グレンリベット蒸留所のジョージ・スミスが政府公認を取ったことを皮切りに続々と政府公認を取る蒸留所が増え、密造酒の時代は終わりを告げました。
その後、モルト・ウィスキーの蒸留所はすさまじい整理統合の歴史を経て、現在は１００ほどが稼働しているんですね。
１８６０年代初頭、アンドリュー・アッシャーによって、モルト・ウィスキーとグレーン・ウィスキーのブレンドがはじめられました。これがブレンデッド・ウィスキーです。
モルト・ウィスキーは個性にあふれ、得てして飲み難いと言われ、グレーン・ウィスキーはおとなしくおもしろ味に欠けると言われます。*3
この両者の短所を打ち消し、長所を引き出したのがブレンデッド・ウィスキーなんです。ブレンデッド・ウィスキーの登場により、スコッチ・ウィスキーは世界へ大きく飛躍しました。
現在でもスコッチ・ウィスキー販売量の９割ほどはブレンデッド・ウィスキーで、日本でも有名なバランタイン、ベル、シーバス・リーガル、カティサーク、Ｊ＆Ｂ、ジョニー・ウォーカー、オールド・パー、ホワイトホースなどは皆ブレンデッド・ウィスキーです。
では、なぜ、出光をはじめ、モルト・ウィスキーに魅力を感じる人々が多くいるのでしょう？
それはモルト・ウィスキーにはブレンデッドやグレーンにはない個性があるからなんですね。
つかれたんで、これにて第二夜終了。
ブレンデットをほめつつも、明日はあえてモルトウィスキーのすばらしさについて語りたいと思います。
