7-11J問題

ちょっと前に公取委が7-11Jの見切販売制限は独禁法に触れるというニュースがやっていましたね。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090623k0000m020122000c.html?inb=yt


↓これで公取委の7-11Jに対して出した排除措置命令*1の内容がわかります。
6月22日 株式会社セブン−イレブン・ジャパンに対する排除措置命令について
条文、不公正な取引方法一般指定告示、公取委ガイドライン、過去の事件例まで掲載されていて、親切だと思います。わかりやすいかどうかは疑問がありますが、それはしょうがないでしょう。
具体的にどう違反なのかは読んでもらうとして、今回の事件の問題点はどこにあるかということをちょっとまた聞きしたので、載せてみようと思います。


なんで見切販売制限に7-11Jが必死になっているかについては、巷では値段がばらばらになることによるコンビニに対する信頼の喪失とか、客が安売り商品しか買いに来なくなる問題、とかいわれています。その問題も確かにあるのですが、一番フランチャイザーにとって重要なのは、会計処理の問題だそうです。
制度会計ではなく管理会計上の問題らしいのですが、7-11Jの管理会計に従って極端事例に抽象化して考えると以下のような問題になるそうです。
たとえば、原価70円の商品を小売価格100円で販売し8個売れたとします。フランチャイザーのロイヤリティは50%だとしましょう。
すると

仕入価格 原価 売上 粗利 ロイヤリティ フランチャイジー損益
700 560 800 240 120 -20

となります。
なんでフランチャイジーの利益がマイナスになるかというと、仕入価格のうち売れなかった商品の原価70*2=140がすべてジーの負担だからです。
そして、売れなかった商品の仕入価格は管理会計上原価として計算されないことになります。
すると売上が800円なのに原価は560円と計算されるので、粗利は240円となり、その半分の120円がザーのロイヤリティになるわけです。
一方で前述のとおり、ジーの利益は粗利からロイヤリティを差し引いた120円から売れなかった商品の仕入価格140円を差し引いて-20円、つまり20円の損失になるわけです。
なお、制度会計上はちゃんと売れなかった商品の仕入価格も原価計算されるそうですので、管理会計の魔法といったところでしょうか。


一方で、これで残り二個を半額の50円で見切り販売したとします。
すると

仕入価格 原価 売上 粗利 ロイヤリティ フランチャイジー損益
700 700 900 200 100 100

となります。
何とびっくり、ロイヤリティが減ってしまうのです。一方でジーは利益がマイナスからプラスに一気にあがります。
それは、売れた商品の仕入原価は、実質的にザーとジーで50:50負担になるからなのです。つまり売れた以上は売価がなんであっても原価計算されるわけです。
しかし、上で見たように見切販売商品は原価割れで売っているので、売価50円-仕入価格70円=-20円の損失がひとつ売るごとに出ます。
売っても損にしかならないから、ロイヤリティが減ってしまうのです。


というわけで、フランチャイザーとしては是が非でも見切販売をしてもらうわけにはいかないのですね。見切で売れると利益が下がってしまうからです。
まあ、実際には税金がありますし、上の例のように綺麗に値引きで売り切れるとは限りませんし、値引きしないで売れたはずのものまで値引きして売ってしまうことになったり、また原価割れで売るとも限らなかったりで、そんな単純にはなりませんが、こんな問題があるってことです。
それでも、廃棄商品原価を15%負担したほうがまだましだ、ということになるわけです。だって見切販売されてしまうと、売ると損失なのに原価の50%負担になってしまいますからね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090623-00000007-oric-ent
セブン-イレブン・ジャパン 6月23日 加盟店様をバックアップする新たな支援策について


さらに問題なのは、この15%負担でさえ、7-11Jだからできることで、ほかのコンビニフランチャイザーではできない、という問題ですね。波及するととんでもないことになります。
7-11Jの利益率は実は30%を超えていて、コンビニ業界でトップを独走しているのです。2位以下は10%強ということで、20%も利益率を離しているのです。7-iHDの黒字は7-11Jで出しているといっても過言ではない状態なのです。
如何に7-11Jが搾取しているか、という風にとることもできます。まあ単純に搾取しているだけではなくてブランド力などもあるのでしょうが。
とすると、この30%超の利益率だから廃棄ロス15%負担もできますが、2位以下のフランチャイザーではやはり厳しいでしょうね。


というわけで、7-11Jの思惑でしたー。
なお当方は会計は専門的に勉強したことはないので、間違いがあると思われます。遠慮なくご指摘ください。

*1:ちなみに、新聞だと排除命令という見出・文言が散見されますが、独禁法上の正確な法令用語では排除措置命令です。排除命令は景表法の場合です。まあ紙面の都合で省略してるのでしょうが。