三角ロジック続き
前回はあまりに書きすぎたので三角ロジックを三段論法として扱い、それ以上のことは書かなかった。
というか、いままで三角ロジックを他人に教える時もそれ以上の説明はしなかった。説明大変だし。解ってもらうのもっと大変だし。
伝統的論理学における三角ロジックはあくまでも三段論法であることは間違いないし。
しかし、引退して好き勝手できる様になった今
現実逃避の一環として、DIS界における三角ロジックと真・ロジック論でも書いてやるかとおもってここに記す。
『三段論法とは意味内容を捨象した形式論理である。
形式論理を厳密的に適用できるのは唯一数学だけである。
実生活の論理は形式論理学では取り扱いきれない。
もちろん根底には数学におけるような形式論理(数学的記号論理学)が存在するが、その応用系として、法学における論理をモデルにすべきである。』*1
たとえばSeriousnessの三角について三段論法によるロジック
C:A∈C
>W:B⊆C |
D:A∈B
に従うと
C:This situation is serious for the victims.
>W:Situation against someone's will is serious for them. |
D:This situation in which the victims have to do something that they don't want to do so is against victims' will.
*2
三段論法を正しく適用すれば↑となる。
A=this situation
B=situation against someone's will
C=Serious situation
となっている。
A∈Bの∈にあたるのが、Dのin which以下so isまでとvictims'。
B⊆Cの⊆にあたるのが、is とfor them
になってるわけだ。
ここで、数学的には、つまり形式論理学的には(特に)Bが例外なくCに含まれてなければならない。
しかしすべてのsituation against someone's willがseriousかといわれると、首を傾げざるを得ない。
あくまでも、目の前のオピニオンの事案のagainst willはseriousだといえるだろうが。
しかし、三段論法によれば、すべてのsituation against someone's willがseriousでなければこの上記三角ロジックは成立しないのである。よってこのロジックは立ちきっていない。this situationが、serious situationに含まれないsituation against someone's willだったら立たないからである。
厳密にたたせるためには、
①すべてのsituation against someone's willがseriousであることつまり,すべてのsituation against someone's will⊆serious situation
すなわちB⊆Cを証明するか、
②situation against someone's willでありながらserious situationに属さない例外に、this situationが含まれないことを証明しなければならない。
すなわちB(situation against someone's will)をB'とB''にわける。
B'⊆C(serious situation)であり、B''¬⊆Cだとすると*3AはB'に含まれること(Bに含まれるがB''には含まれないこと)を証明する必要がある。
すると三角ロジックは
①
C:A∈C
>W:B⊆C ←{∀x∈B | x∈C}(Wの証明) |
D:A∈B
か
②
C:A∈C
>W:B'⊆C ←B'⊆C∧B''¬⊆C(Wの補足説明) |
D:A∈B'(A∈B∧A¬∈B''ともかける) ←B=B'∪B''∧B'∩B''=Φ
(Dの補足説明)
となるはずである。
しかし、そんなことをやっているディスカッサントにはついぞお目にかかっていない。目の前の事象のsituation against victims' willがserious situationに含まれていればそれでよし、となる。
situation against someone's willがすべてserious situationに含まれているかなんて考えていないのである。*4
ここに、数学におけるような、形式論理と、日常における論理との間に乖離がある。
本来証明しなければならないWを厳密な証明なしでつかっているわけだ。
Wセンテンスには、一見すれば当たり前のこと(reasoning)を使うから、ということがある。
当たり前のこと(一般的常識)だから、situation against someone's willがすべてserious situationに含まれているつもりでやろう、という暗黙の前提のようなものができてしまっているのである。
それはたとえばsituation against someone's willがすべてserious situationに含まれているかを証明するなど不可能である、ということもあって、
一見して当然の事は、反論がない限りは真実として扱うという、形式論理学からすればありえない風潮だが、実質的議論にはこれをみとめないと話が進まないのである。
三段論法を代表とする形式論理学の実生活適合性に問題を抱える中、颯爽と登場したのがToulmin*5(トゥルミン、トールミンあるいはトゥールミンと発音するのかな)氏である。
おそらくDIS界における三角ロジックはこのToulmin氏が提唱した実際的な論理構造、Toulmin's Model(トゥルミンモデル、実は相当に有名。でも俺はToulmin氏の名前忘れとった)からきているのだとおもわれる。
ただしより正確には、Toulmin's Modelを簡略化*6した、松本道弘*7氏の提唱による三角ロジックが、DIS界の三角ロジックの元であろう。
よって、三角ロジックを真に正しく理解するには、Toulmin's Modelの理解が不可欠である。
そして、それは逆に三角ロジックの不完全さと、ロジックというものへのより一層の理解を与えるだろう。
つかれたから今日はここまで。